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改正再エネ法がついに施行
西村あさひ法律事務所

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の一部改正が2022年4月1日より施行され、法令名は「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」(以下「再エネ法」という。)に改正された。これまでも施行に先立ち実務上の対応が検討されてきたが、改めて主な改正点の概要を紹介する。

目次

    FIP(Feed-in Premium)制度


    FIT制度は、固定価格での買取保証やインバランスリスクの免除により、参入障壁を下げ、再エネ電源の拡大に大きく寄与してきたが、再エネ電源の自立化の観点から、次なるステップとして市場連動型のFIP制度が導入された。FIP制度においては買取保証はなく、事業者は卸電力取引市場や相対取引により売電を行い、当該売電収入に加えてプレミアム(供給促進交付金)を交付期間(FITの調達期間と同期間に設定)にわたって受け取る。これにより、事業者には、市場価格の高まる時期に売電するインセンティブが生じ、市場を意識した行動が期待されることとなる。主に50kW以上の再エネ電源が対象となり、供給促進交付金に係る業務は、電力広域的運営推進機関が行う。プレミアムの額は、基準価格(FITの調達価格と同額に設定)から、市場価格等に基づき算定された価格を控除した値をもとに算定されるが、詳細は再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(以下「施行規則」という。)に規定されており、資源エネルギー庁のウェブサイトでは簡易シミュレーションツールが公開されている。
    <関連規定:再エネ法2条の2乃至2条の7、施行規則3条の2乃至3条の8>

    解体等積立金制度


    FIT制度の調達価格は設備の廃棄等に必要な費用も加味して決定されていたが、自主的な積立の実施率は低く、特に太陽光発電では多様な事業者が参入し事業主体の変更も多いこと等から発電設備が適切に廃棄されない懸念もあり、法令に基づく積立制度が創設された。現時点では主に10kW以上の太陽光発電が対象とされている。積立の方法は、毎月の売電代金(FIPの場合は供給促進交付金)から積立額を控除し、源泉徴収的に外部積立を行う方法(積立は電力広域的運営推進機関になされる。)を原則とし、厳格な要件を満たし再生可能エネルギー発電事業計画の認定を受けた場合には例外的に内部積立も認められる。外部積立の積立額は、調達価格(FIPの場合は基準価格)に対応する解体等積立基準額(円/kWh)(告示で規定)により算定され、積立時期は原則として調達期間(FIPの場合は交付期間)の終了前の10年間とされている。
    <関連規定:再エネ法15条の6乃至15条の16、施行規則13条の4乃至13条の10、廃棄等費用積立ガイドライン>

    認定失効制度


    認定を取得したまま運転を開始しないいわゆる未稼働案件については、国民負担の増大や系統の圧迫といった問題が指摘され、これまでも失効措置を含めて様々な対策が講じられてきたが、改めて全電源を対象として、運転開始に向けた進捗が確認できない案件の認定を失効させる制度が制定された。本制度においては、告示により電源毎に定められる運転開始期限日の1年後の日を基準日として、運転開始されない場合には以下のルールが適用される。まず、基準日までに系統連系工事着工申込書が一般送配電事業者等により、①受領されていない場合は基準日にて失効となり、②受領されている場合は、運転開始期限日に、認定から運転開始期限日までの期間(例えば、太陽光は3年、風力は4年(いずれも認定申請時に環境影響評価を行っていない場合))を加えた期間まで失効期間が延長される。また、③基準日までに、系統連系工事着工申込書が受領され、かつ工事計画の届出が不備なく受領されたこと等を経済産業大臣が確認した場合は、運転開始期限日に調達期間に当たる年数を加えた期間まで失効期間が延長される。なお、2022年4月1日時点で運転開始期限日が経過している太陽光案件や2018年3月31日までに認定を受けた太陽光以外の電源については電源毎に定められた経過措置が適用される。
    <関連規定:再エネ法14条2号、施行規則13条の2及び13条の3、附則2条、3条(経過措置)>

    おわりに


    以上、ページの関係上、立ち入れなかった部分も多いが、新制度を再確認して頂くきっかけとなれば幸いである。個別案件の対応の際は具体的な情報も踏まえ、上記各関連規定も含めて精査されたい。

    この記事の著者

    西村あさひ法律事務所 森 宣昭
    西村あさひ法律事務所
    森 宣昭
    西村あさひ法律事務所パートナー弁護士。
    ファイナンス業務を中心に取り扱い、特に、再生可能エネルギーによる発電プロジェクトやPFI・コンセッション事業を含むプロジェクト・ファイナンス案件を融資金融機関側・事業者側のいずれの立場からも数多く手掛けている。
    2005年、東京都立大学法学部法律学科卒業。2007年、東京大学法科大学院修了。2008年、弁護士登録(第二東京弁護士会)。2011年~2012年、株式会社日本政策投資銀行に出向(パートタイム)、2016年、ボストン大学ロースクール卒業(LL.M. in Banking and Financial Law)。2016年~2018年、Marubeni Middle-East & Africa Power Limited(ドバイ)に出向。2018年、ニューヨーク州弁護士登録。
    西村あさひ法律事務所パートナー弁護士。
    ファイナンス業務を中心に取り扱い、特に、再生可能エネルギーによる発電プロジェクトやPFI・コンセッション事業を含むプロジェクト・ファイナンス案件を融資金融機関側・事業者側のいずれの立場からも数多く手掛けている。
    2005年、東京都立大学法学部法律学科卒業。2007年、東京大学法科大学院修了。2008年、弁護士登録(第二東京弁護士会)。2011年~2012年、株式会社日本政策投資銀行に出向(パートタイム)、2016年、ボストン大学ロースクール卒業(LL.M. in Banking and Financial Law)。2016年~2018年、Marubeni Middle-East & Africa Power Limited(ドバイ)に出向。2018年、ニューヨーク州弁護士登録。
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