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2050年カーボンニュートラルに向けて、進化する再エネ普及拡大策
FOUREメディア編集部

 再生可能エネルギーとは、太陽光発電や風力発電など、発電時にCO2を排出しないエネルギーです。そのため、気候変動対策として、その拡大が期待されています。気候変動問題の国際条約である気候変動枠組み条約のパリ協定においては、地球の平均気温の上昇を2℃未満、可能であれば1.5℃未満に抑制することになっています。そして、そのためには、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの普及が不可欠となっています。

目次

    2030年温室効果ガス46%削減への挑戦


    2012年に施行された、再エネの電気を決まった高い価格で買い取るという固定価格買取制度(FIT)は、日本全国に太陽光発電をはじめとする再エネを普及拡大させ、日本の景色を変えたといってもいいかもしれません。この制度によって、発電電力量のおよそ1割が水力発電を除く再エネとなり、今後も増えていく見通しです。

    とはいえ、固定価格買取制度の買取価格が大きく下がり、実質的に終了が迫っていることから、この制度による太陽光発電の導入は減速していく傾向にあります。ところが、気候変動対策としては、日本の2030年のCO2など温室効果ガス排出目標はこれまでの26%削減から46%に引き上げられ、さらに政府は欧米と足並みをそろえて2050年にはカーボンニュートラルとする宣言をしています。そして、この目標を実現するためには、再生可能エネルギーの導入を加速していくことが必要です。

    「第6次エネルギー基本計画」で見直される再エネ目標


    政府は3年ごとに、「エネルギー基本政策」を策定しています。これは、どのようなエネルギー政策に取り組むのかがまとめられたものですが、電源構成についても目標値が示されています。2018年に策定された「第5次エネルギー基本計画」においては、2030年の電源構成の22~24%を再生可能エネルギーにするとしています。これは、電源のおよそ8%を担う水力発電所を含んだ数値です。そうすると、現時点でかなり目標に近づいているといえます。しかし、2030年の温室効果ガス排出量の削減目標を引き上げたため、現在検討中の「第6次エネルギー基本計画」では、再エネの導入目標も引き上げられる見通しです。おそらく、30%を超える目標になるのではないでしょうか。

    では、日本政府はこれから、どのような政策で再エネの導入を加速させていくのでしょうか。

    FIP、農地利用、送電線の効率化と増強など新たな政策も


    再エネがずいぶん安くなってきたとはいえ、日本ではまだ火力発電所などからの電気よりも高いと見られています。太陽光発電をとっても、土地の価格や地形、工事費などの要因で、コストがなかなか下がらないと指摘されています。そこで、FITにかわって、FIP(Feed In Premium)という制度が導入されます。これが、再エネの電気を市場で販売するにあたって、プレミアム価格で補填するというしくみです。プレミアム価格がいくらになるのかは、まだ決まっていません。また、再エネなどCO2を排出しない電気には、「環境にやさしい」という価値があります。この価値の部分だけを、「非化石証書」という形にして取引するしくみも導入されています。電気のユーザーは電力会社から非化石証書がセットになった電気を買うことで、実質再エネ100%の電気として使うこともできます。

    再エネを新たに設置する場所や、送電線も課題です。太陽光発電についても、これまでのように林地を開発するのは自然環境への負荷が大きく、難しくなっています。そのため、建物の屋根への設置を義務付けるという案があります。また、農地を利用し、農業と太陽光発電事業を同時に行うソーラーシェアリングは、日本発の再エネ事業で、世界でも広がりつつあります。風力発電については、建設前の環境影響評価を効率的にする方向で調整が進んでいます。

    再エネの電気を送るための送電線については、今ある送電線を効率的に使うようにする一方で、北海道や東北、九州の、とりわけこれから開発が始まる洋上風力発電所の電気を首都圏や関西圏に送るために、大容量の海底送電線を整備するという計画も検討されています。

    どのような政策を重点的に取り組んでいくのかは、近く取りまとめられる「第6次エネルギー基本計画」に盛り込まれていくことになるでしょう。その一方で、FITとは異なり、再エネの開発にあたっても、これまで以上のコストダウンが必要ともなってきます。政策と事業者の努力がそろって、2050年カーボンゼロに向かう再エネ開発が進んでいくことになるでしょう。

    この記事の著者

    FOUREメディア編集部 本橋 恵一
    FOUREメディア編集部
    本橋 恵一
    環境エネルギージャーナリスト。書籍「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)、「スマートグリッドがわかる」(日本経済新聞出版)、「電力・ガス自由化の衝撃」(毎日新聞社)、「太陽光発電の「卒FIT」入門」(オーム社)。
    執筆媒体「週刊エコノミスト」「月刊BOSS」「ガスエネルギー新聞」「月刊電気と工事」「リベラルタイム」「経営者会報」「Energy Shift」他多数。
    現在、エネルギー自由化、宅内IoT、気候変動、スマートシティなどエネルギー全般をテーマに執筆中。
    環境エネルギージャーナリスト。書籍「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)、「スマートグリッドがわかる」(日本経済新聞出版)、「電力・ガス自由化の衝撃」(毎日新聞社)、「太陽光発電の「卒FIT」入門」(オーム社)。
    執筆媒体「週刊エコノミスト」「月刊BOSS」「ガスエネルギー新聞」「月刊電気と工事」「リベラルタイム」「経営者会報」「Energy Shift」他多数。
    現在、エネルギー自由化、宅内IoT、気候変動、スマートシティなどエネルギー全般をテーマに執筆中。
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