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再エネの大量導入に向けた競争と共創 東急不動産の取組①
東急不動産株式会社

目次

    第6次エネルギー基本計画が、10月22日に閣議決定されました。これは、エネルギー政策基本法第12条第3項の「経済産業大臣は、関係行政機関の長の意見を聴くとともに、総合資源エネルギー調査会の意見を聴いて、エネルギー基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない」という定めに基づき策定されています。パブリックコメントには6,392件の意見が寄せられ、改めてエネルギー施策への国民の関心の高さを感じました。
    第6次エネルギー基本計画には、より近い未来のエネルギー政策として、2030年に向けた政策が示されています。2030年度におけるエネルギー需給の見通しでは、「野心的な見通し」として、電源構成のうち再生可能エネルギーを36~38%とした試算を提示していますが、我々発電事業者の足元の開発状況等を見ると、この数字は相当高い目標ではないかと思っています。
    これから8年と少しでこの水準を達成しようとすると、環境アセスメント等の手続きが必要な大型案件では、2~3年である程度の目途付けができなければ、運転開始は難しいので、2~3年で2030年の電源構成のおおよその割合は判明するのではないかと思っています。その上で、2年後には再エネ導入に向けた追加的な施策の検討が始まると思っています。
    再エネ発電所建設に向けた環境は、適地の減少や発電した電気を自ら売電する先を探してより安定的に高く販売する為の工夫をしなくてはならない等、FITの制度に甘えながら育てられた環境から、事業者が自らの創意工夫をしながら開発推進する必要性に迫られており、これからが再エネ事業者としての力量が図られる正念場だと思っています。

    東急不動産では、「ReENE」という再エネのブランディングを4年前から展開しており、その中で3つの事業目的を定めています。1つめは「脱炭素社会の実現」、2つめは「日本のエネルギー自給率の向上」、3つめは「地方経済の発展」です。



    1つめの「脱炭素社会の実現」は、東急不動産の事業領域は、オフィスや商業施設、ホテル、リゾートといったエネルギーを消費する事業が中核なので、需要家として脱炭素に向けて取組を強化し更に東急不動産以外の需要家にクリーンなエネルギーを届けて脱炭素化への取組を図るというものです。2つめの「日本のエネルギー自給率の向上」と3つめの「地方経済の発展」については、私個人としても非常に重要な要素だと思っており、ブランディング策定の際に目的として追加したものです。



    4~5年前に遡ってみると、当時、再エネ発電所は金融商品化が進んでおり、FIT期間終了後に全てきれいに事業が終了するように計画される事がファイナンスの条件でした。土地は所有せずに20年間の借地、20年後に解体撤去して更地にして事業終了で金融取引として終了させる事が主流でした。FIT制度は再エネ賦課金という形で、需要者に広く再エネのコストを負担してもらって、再エネ発電所への投資を増やす仕組みですが、この賦課金によって支えられた再エネ発電所が運転開始から20年後に全て無くなってしまっては、一過性のお祭りのようなもので日本の国産エネルギーとして残らない事に不安を持っていました。
    FIT終了後も発電しつづければ将来日本に安い再エネを供給できエネルギー自給率向上につながり、未来に国産エネルギーを残す事ができると考えていましたし、再エネ賦課金は国民が負担するお金の中では、再エネ促進のための未来への投資として考えると、極めて質の良い使われ方だと思っていました。未来の子供たちに我々の世代の負担で、エネルギーという資産を残すことができるからです。
    そういった背景もあり、20年以降のFIT期間終了後も国民の負担で作られたFIT電源が、長期安定電源としてエネルギー自給率向上に寄与し、再エネ電源の種別に関係なく再エネを長期安定的に運用して日本のエネルギー資産とする為に、弊社を含めた5社で一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)を共同設立し、現在では83社の会員企業の方々と共に再エネの長期安定電源化に向けて活動しています。
    また、地域と再エネ発電所の共生も重要なテーマとして意識していました。現在では、地域と再エネ発電所の在り方がより重要になってきていると感じており、再エネ発電所と地域との関わり方がより深刻化しているケースも増えてきていると感じています。
    脱炭素の旗印のもと、社会的意義が高い再エネ発電所も、建設に乱暴な方法で開発して、地元住民とのコミュニケーションを無視して作られていく在り方があるとすれば、今後、更に再エネを導入していく為には、改めなくてはならないと思っています。
    地域経済の発展や地域に支持される再エネ発電所になっていく為には、再エネ発電事業者が共に協力して、知恵を出し合って考えていく必要があると考え、今年の6月に理念に賛同いただいた、皆さまと一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)を設立しました。

    再エネ事業が日本で大きく動きだしたのは、2012年のFITの導入からで、産業としては、未だ10年も経っていない産業です。その為、様々知見や経験の蓄積が浅いと思っています。我々の保有するサイトでも様々な事が起こっており、その解決策に試行錯誤しながら取り組んでいますが、発電事業者がそれぞれのノウハウを持ち寄ればより、効率的にスピード感を持って解決できるのではないかと考えています。
    次回は、競争と共創について弊社の取組の方向性含めてご説明します。

    この記事の著者

    東急不動産株式会社 西田 恵介
    東急不動産株式会社
    西田 恵介
    戦略事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部
    執行役員 本部長

    一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)
    幹事長
    戦略事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部
    執行役員 本部長

    一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)
    幹事長
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