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ESG投資と企業の再エネへの取組
FOUREメディア編集部

 近年、ESG投資への注目が高まっています。ESG投資とは、E=環境、S=社会、G=ガバナンスの3つに留意した投資です。Eには、気候変動、水環境、生物多様性、循環型経済のおもにこの4つが中心ですが、とりわけ気候変動は多くの企業にとって共通した課題となっています。ちなみに社会とは、主に人権問題に関するもので、公平性や貧困、労働環境、ジェンダー、先住民などへの配慮が求められています。また、ガバナンスは法令を遵守するということでいいでしょう。逆にブラック企業への投資はESG投資に値しないということです。

目次

    ESG投資は長期的視点に立った投資


    なぜ、ESG投資が注目されるのか。それは、ESGそれぞれに配慮した事業でなくては、「持続可能ではない」ということ、すなわち、長期的な投資として不適だからです。例えば、年金基金のように長期的な視点に立った投資を行う機関投資家にとって、将来の年金が目減りしては困るのです。

    気候変動問題に限れば、近年は異常気象による災害(豪雨や干ばつ、山火事など)が増え、損害保険の支払いが増えています。したがって、CO2排出を増やすような投資は、すでに金融業界全体にとって、持続可能なものではないということになります。

    ESG投資に関連して、金融機関や機関投資家は企業に対し、財務情報だけではなく、非財務情報や長期ビジョンを要求するようになってきました。例えば、CO2排出削減にどのように取り組んでいるのか、またその取り組みにあたって、どのようなシナリオを描いているのか、といったことです。また、企業もこうした要求に対応するため、「科学的知見に基づいた目標設定(SBT)」や「再エネ100%を目指す(RE100)」といったイニシアチブもできています。

    大まかに言えば、もはや企業はCO2の排出を削減する努力をしなければ、投融資が受けられなくなっている、といっていいでしょう。そして、CO2排出削減の手段として、再エネを利用する企業が世界的に増えています。そして、CO2排出削減が求められるのは大企業だけではありません。大企業のサプライヤーに対しても、CO2排出削減が求められています。例えば、製造業大手がCO2排出を削減する場合、自社だけではなく、部品を供給する企業や製品を運ぶ企業にもCO2排出削減が要求されるということです。また、削減できなければ、取引してもらえなくなるということでもあります。

    企業が再エネを利用する3つの方法


    企業が再エネの電気を使う場合、大きく分けて3つの方法があります。1つは、事業所に再エネの設備を設置することです。いわば、再エネの自家用発電設備です。もう1つは、電力会社から再エネ由来の電気を買うことです。そして最近は、3つめの方法として、PPA(電力販売契約)が注目されています。

    PPAというのは、エネルギー事業者が、お客様のために発電所をつくり、そこで発電した電気を直接販売するというものです。自分で自家用発電設備を設置しなくても、再エネが使えるということがメリットです。海外ではアマゾンやグーグルをはじめ、マクドナルドやウォルマートといったさまざまな企業が、PPAを利用して再エネを調達しています。その点、日本ではまだこれから、といったところですが、それでも少しずつ取り組んでいる企業が出てきました。

    日本もこれからオフサイトPPAの時代へ


    PPAには、エネルギー事業者がお客様の事業所の敷地内、例えば屋根上や駐車場に再エネ発電設備をつくり、そこから電気を供給する「オンサイトPPA」と、離れた場所に再エネ発電設備をつくり、送電網を通じて電気を供給する「オフサイトPPA」の2種類があります。日本ではこれまで、オンサイトPPAが多くつくられてきました。送電網の使用料(託送料金)を払わなくて済むといったメリットがあったからです。しかし、屋根上や駐車場に設置した発電設備からの電気では量が限られます。そこでこれからは、海外のようにオフサイトPPAが主力になっていくと見られています。また、こうした形で再エネを調達するのは、大企業だけではありません。中小企業についても、金融機関や取引先から再エネの利用を求められることになるでしょう。これからは、PPA向けの再エネ発電所も増えていくことになります。

    この記事の著者

    FOUREメディア編集部 本橋 恵一
    FOUREメディア編集部
    本橋 恵一
    環境エネルギージャーナリスト。書籍「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)、「スマートグリッドがわかる」(日本経済新聞出版)、「電力・ガス自由化の衝撃」(毎日新聞社)、「太陽光発電の「卒FIT」入門」(オーム社)。
    執筆媒体「週刊エコノミスト」「月刊BOSS」「ガスエネルギー新聞」「月刊電気と工事」「リベラルタイム」「経営者会報」「Energy Shift」他多数。
    現在、エネルギー自由化、宅内IoT、気候変動、スマートシティなどエネルギー全般をテーマに執筆中。
    環境エネルギージャーナリスト。書籍「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)、「スマートグリッドがわかる」(日本経済新聞出版)、「電力・ガス自由化の衝撃」(毎日新聞社)、「太陽光発電の「卒FIT」入門」(オーム社)。
    執筆媒体「週刊エコノミスト」「月刊BOSS」「ガスエネルギー新聞」「月刊電気と工事」「リベラルタイム」「経営者会報」「Energy Shift」他多数。
    現在、エネルギー自由化、宅内IoT、気候変動、スマートシティなどエネルギー全般をテーマに執筆中。
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